タイガージェットフィスト

オープニング展開
内緒だった仕掛けは、こういうこと
部屋からはじまるこの芝居、
突然白い壁がふたつに割れて、壁はまたたくまにパタンパタンとたたまれ、
広がった舞台には、モノトーンとけしの花の広い幻想世界、そして中央に影絵タッチのアニメーションオープニング
という仕掛け
幻想世界たる舞台の頭上には幾筋のワイヤーが張り巡らされ、
「あの服がほしいわ!」という服類や、幻想世界の王様や大臣たちが、
切り絵タッチのからくり人形としてワイヤーをつたったり窓奥から現れ、舞台袖で操られてコミカルに動く

すばらしい舞台装置と、統一されたタッチに、感嘆

たった二人芝居なのに、
数々の舞台の仕掛けのために、裏には4人の黒男たち
そして舞台中央にはかわいらしい切り絵アニメーションがバーンと

衣裳はみたこともない、かわいいかどうかもよくわからないド派手なドレスパレード
モノトーンの舞台と赤い床に、よく映えること

濱崎留衣の素晴らしき下僕たちに、もういちど拍手


ワタシは制作アドバイザーとして入ったものの、この壁の切り絵までやらせてもらった
そう、この壁の絵は、書いてあるのではなく、「アスファルトシート」という紙を切って貼ってあるの
まずは物語のキーとなる「けしの花」のモチーフをおこし、
窓奥のステンドグラスをはじめ、蝶や壷や、どのパーツにも、モチーフのけしの花を刻んだのだけど、見えんわな

時間がないのにやりたがるワタシに、舞台美術ユニット「兄弟船」は、こころよく協力してくれた
アスファルトシートという、とてもよい素材を用意してくれ、
思いつくままにFAXで送信する図案をどんどんテイストに盛り込んでくれ、
できるだけやっただけ、どうにでもなるように、そして存分に満足感を味わえるように、
仕込み終了ギリギリまで、好きなだけ作品を好きなだけ作らせてくれた
ふところが深く、とてもあたたかく情熱ある舞台美術家さんだ
舞台装置とテイストの摺りあわせが最も必要な
アニメーション映像そして照明と、音楽
いちじが万事、そう

舞台美術・舞台装置製作ユニット「兄弟船」
技術や知識もさることながら、彼らのコミュニケーション能力の高さと
溺れず驕らずよい舞台をつくるために喜んで労する彼ら 心から尊敬

よい舞台をつくるためにもっとも大事なのは、
円滑でじょうずなアウトプットとインプットだと痛切に教えられた
表現もそうだけど、意見や情熱や我や気遣いのほうが、とくにそう
ああ、舞台に限らず、そうだっけ
窓

ただ、終わってしまってから残る感情を、どうしよう
これで、よかったねおつかれさま、で、終わってよかったのだろうか

装置と映像と芝居のバランスがよかったようには思えない
トータルバランスで、装置が芝居を引き立てる以上の印象を残すなんて、よかったのだろうか
制作面で実行できなかったことの反省もたくさんある
手が足りなかったというのは、目先だけのこと
ちがう、大きな交通整理ができてなかったのだ
それぞれが分担した分野でそれぞれゴールに向かってひたはしるのを
パワー調整しつつ全体のタスクリストを消しこむことが先決だったはず
プロデューサー不在の団体の弱さを実感する

そしてもうひとつ
芝居が物足りなく思えたのは
芝居以外とのボリュームバランスのせいだけだろうか
10日ほど前の稽古と、役者の演技やコトダマの深みが全然変わってないように思えたのは
ワタシが見慣れたせいだったのだろうか

濱崎留衣、もちろん最高にいい女優だと思うけれど、
コトダマが物足りなかった
楽屋で愚痴いってるときのほうが、よっぽどコトダマがある
体力的に疲れていたというのが大きな原因のような気がするが
脚本のコトバに世界に反応して 表現したいと欲した初見のときの欲はどこへいったのか
初見のときから深みは増すはず、発見もたくさんしたはず
だけど見受けられるのは 稽古した通りの 演出が指示したとおりの
「いままでの稽古のなかでいちばんじょうずにできる回」みたいなもの
こなしているだけなら 観客の期待する気迫に勝る気迫を吐く気がないなら
舞台の何が楽しくてそこにいるというのだろう
客席の空気に反応しない 観客の「気」に触れようとしていない芝居なんて
ライブじゃなくていいじゃない
長岡暢陵については、何をしても舐めまわしたいほど大好きなので、逆にわからんけど
ちゃんと納得して着地した演技だったんだろうか
「気」がまっすぐ伸びていない

初めてこの舞台を目にしこの作品に触れたであろう観客の
温度を ワクワク具合を サプライズ具合を
受け取って返したり反応する余地を持たないこの演技を
ひとは「ぶれない」という褒め言葉で
飾ったりするものなのだろうか
装置の裏の黒男たちのほうが、よっぽどそれに反応して「びっくりさせちゃれ」的な気を返していて
そんなおちゃめな「気」が発せられる舞台転換はすてきだった
きっと、これは、「演出」の意図で作り上げられた世界観だから
ぶれない感じが褒められるテイの作品であったのだろうが
それはワタシの好みではなかった

それでも
たった二人芝居、この濱崎留衣と長岡暢陵の二人芝居を
すごいことにしちゃろう、と、これだけの有能な人材を一瞬で集め、結束させ、実現させた
女優・濱崎留衣と、演出・中村雪絵に 心から賞賛

それらのことを言いたくて言い出せないまま朝4時、打上げを後にする


  • プロフィール

  • クロキカオリ
    1974.5.4生まれ 福岡在住
    カフェや店舗など空間とヒトで仕掛ける「ワルダクミ職人」
    芝居・コント・音楽・リーディング・おみくじ・誕生日サプライズ・・・ウヒヒでグフフなこと、思いつけばなんでも。
    企画/脚本/演出/制作/音響/照明/
    モットー:思い立ちながらもう行動!

    座右の銘:「身ぶりはここのあまりにして」
    坂田藤十郎

    【THEATRE SONES】(since2000)
     企画・プロデュース
    【anti-couple】(since2005)
     企画・脚本・演出・プロデュース
    【タイガージェットフィスト】
    制作(since2008)

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