
あかあかと 燃ゆる夜神楽 酔え唄え
白い吐息や 神の火遊び

弥勒祐徳氏が持ち込んだ100号と50号の2枚のカンヴァスは
神楽舞台の下手に二畳ほどの大きさで立て掛けられた
もう40年も神楽を描き続けた「弥勒先生」
今年はどの場面ば描かれますとでしょか
村の誰もが今年の弥勒先生の絵を楽しみにしている

地元農協女性部の皆様の炊き出しをいただき、酒で身体を温めたら
芯から冷え込んできた神楽舞台の周りの篝火にあたりながら
清めの儀式が始まるのを眺める
イノシシの頭が献上されるのは、狩猟が中心の村所ならでは
米、野菜、魚、、、次々に運ばれる捧げ物
村民が集まり始め、むしろの上にひしめきあって座り談笑する
今宵は神と人とが共に愉しむ宴
弥勒先生は、まずカンヴァスの周りから、
笑顔の村人と飾られた祭壇をうれしそうに描いていく
酔った観客からシテへ、じょうずな合いの手が入る
ヤジも飛ぶし、即興詩吟も飛び交いはじめ
そろそろ神様が降りてくる時間だ
夜が更け日付がかわるころ、まずは「大王様」が降りてくる
青銅色の面をつけた大王様が舞い始めた途端、
弥勒先生の纏う空気はガラリと変った
息をするのももどかしいくらいの速さで
カンヴァスの中心に筆を走らせ始める
大王様、そして続いて登場する爺様、婆様、七ツ面という子供たち
次々と驚異の速さで筆が走り、舞い終わるのと同時に100号の絵の出来上がりだ
しばらく近づいたり遠ざかったり立ったり座ったりして眺め
白い絵の具缶のふたを足でギュっと踏み閉めると
少し口許がゆるむ
どうやら出来上がりのようだ


